ハリルの初恋は、高校生のときだった。相手は別の町に住んでいる同い年の女性で、クミシュテペの親戚を訪ねてときどきやってくる人だった。
 彼女を初めて見たのは、犠牲祭のときだ。当時クミシュテペでは、年に二回、犠牲祭と断食明けの祭りのときだけ、若い男女が出会うことが黙認されていた。祭りのあいだは、だれもが一張羅を着て出かけていく。出会うといっても、道ですれ違って顔を見たり、微笑み合ったりする程度のことだったが、ハリルはそこで彼女を見かけた。
 男性が腕を差し出し、女性がその腕に軽く触れる。それがトルクメンの男女が公の場でとることのできる、もっとも接近した行為だった。しかし初恋の彼女とのあいだに、それが起こることはなかった。
 彼女の祖母の家は、ハリルの自宅のそばにあった。ハリルは二階の部屋から彼女を見、彼女もハリルを見返した。言葉を交わすこともそばに寄ることもなかったが、そうやって二人は想い合う仲になっていった。高校生活はゴルガンという別の町で過ごしていたので、恋人を見ることができるのは、年に一回か二回のことだったが、ハリルは彼女に恋をし、将来は結婚したいと考えていた。